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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(オ)114号 判決 1960年12月02日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人佐久間和の上告理由第一点について。

しかし、所論自作農創設維持の事業により創設された自作地でその旨登記を経由したものであつても、自作農創設特別措置法上当然に遡及買収から除外されるわけのものではなく(同法六条の二第二項参照)、右の事情は、ただ遡及買収を相当とするかどうかの判断の資料となるに過ぎない。そして原審の引用する一審判決の認定によれば、本件農地は創設自作地として登記を受けた後も所有者が自作することなく小作に付されていたというのであるから、かかる事情の下においては本件遡及買収が不相当であるといい得るものではなく、まして重大明白な瑕疵のある当然無効の処分といい得るものではない。

その他原審の引用する一審判決の認定する事情の下で本件遡及買収を当然無効のものと解すべき根拠はなく、所論は、原審の認めない事実関係を前提とするものであるか、若しくは独自の見解により原判決を非難するものであつて、すべて採用の限りでない。

同第二点(一)について。

遡及買収が憲法三九条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和三〇年(オ)二二〇号同三三年四月二五日第二小法廷判決、集一二巻六号九一二頁)とするところであつて、右に反する所論は採るを得ない。

同(二)、(三)について。

原審認定の事情の下で本件遡及買収を違法視し得るものではなく、所論違憲の主張は、本件遡及買収申請が違法であることを違憲に名を借りるものであり、その採るを得ないことは前述のとおりである。

また、原審認定の事情の下で遡及買収を申請することが直ちに権利濫用にわたるといい得るものではなく、権利の濫用を云為する主張も採用の限りでない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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